時遡り時辿り 時遡の薬編—–後編
そうして、二人の時間は過ぎてゆく―― 一分一秒が、かけがえのないものになっていく。それらは、もう二度と訪れぬがゆえに輝いて、大切な思い出へと姿を変える。ティアはそれを感じ取りながらも、考えることは、しなかった。別れを惜しむ気持ちが、そうさ…
HEATH&TIA
時遡り時辿り 時遡の薬編—–中編
「どうしよう……」 噴水のある公園へと続く階段の前で、ティアは立ち尽くす。あとは、どこにいくところがあるだろう。あとは適当に、なんていってたから、もしかしたら街を出てしまった? 嫌な予感に頭を痛めていると、ぽんと肩を叩かれた。「どうしたんだ…
HEATH&TIA
時遡り時辿り 時遡の薬編—–前編
とんとん、と控えめに扉を叩く音に、ティアは「はーい」と応えながら、小さな家のたった一つの出入り口に向かった。わずかに蝶番を軋ませながら扉を開くと、長身の影が家の前に立っていた。にこ、とティアは高い位置にあるその顔を見上げながら微笑む。「お…
HEATH&TIA
時遡り時辿り
「新しい石碑?」 目の前に置かれた紅茶の湯気で小さな肺を満たしながら、ティアは相対する人物の発言を繰り返した。「ええ、そうよ」 豊かな赤い髪を背に流した都の魔女ナナイが、頷きながら机を挟んだ正面の椅子に腰掛ける。 たまたま占い横丁を通りかか…
HEATH&TIA
酒精の落し物
「――ん……、んん……?」 ガタゴトと、遠いところで音がする。 むにゃ、と口元を動かしてティアは意識をなんとか浮上させようと試みる。まだいいじゃないか、いかないで、と夢の世界が引きとめようとするのを、なんとか逃れて目を開く。 真っ暗。 ぱち…
HEATH&TIA
両手に花と約束を
「いやぁ、あんたたち仲のいい兄妹だね!」「……」「……」 今日は年に四回開催される大市の日。 何気なく覗き込んだ染め織物の露店で、異国の模様の美しさに目を輝かせていたティアとそれを見守っていたヒースへとかけられた店員のそんな台詞に、二人は顔…
HEATH&TIA
やがて一色
「好きです!」 古き歴史を誇るフランネル城の長い回廊に、少女らしい高い澄んだ声が響き渡る。 偶然その場に居合わせた者たちは、一瞬怪訝な表情を浮かべ――それが、何者かに向けて想いのたけを告げるものだと気付き、一斉に音源を確かめた。 そこには真…
HEATH&TIA
蛍の夜
「ほたる?」 ティアのきょとんとした声が、小さな家に響いた。 巨木の一部に住居を構えているラウカの家に、森の探索がてらティアと二人で邪魔をしたのが今日のこと。 友人二人の訪問をラウカはとても喜び、三人がかりで森の獲物を追いかけたりした。 今…
HEATH&TIA
お味見はいかが
麗らかな日、太陽が西に転がり落ち始める頃。 荘厳で華麗な装飾がふんだんに施された城の片隅。さらさらと零れるような光を通す大きな窓の枠に腰掛けて、ヒースは一息ついていた。 本国から派遣されている文官との会議を終えたヒースは、強張った肩をほぐ…
HEATH&TIA
少女の悩み
世界は滅びに向かっているとはいえ、一日は穏やかに過ぎていき――ティアが、ゆっくりと家でくつろいでいたとある日、とある時刻。 突然の訪問者があった。 返事をして、古びた扉をあけて。目の前に立つ人物を見上げ、ティアは上擦った声をあげた。 その…
HEATH&TIA
視線を交わしたその瞬間、07
一人で赤くなったり青くなったり、天に昇ったりどん底へ突き落とされたりと、恋の激動をこれでもかと味わったティアと、冷静そうに見えて実のところそうじゃなかったヒースの二人が結ばれて一週間もしないうちに――ヴァイゼン帝国の将軍と、カレイラの英雄…
HEATH&TIA
視線を交わしたその瞬間、06
「……だって……ヒースさん、婚約するんでしょう?」 そしていつか、結婚する。手の届かない場所にいく。 ティアの言葉に、ヒースの瞳が見開かれる。その様子から、知られていると思ってはいなかったことが伺えた。秘密裏に進められていたというのだから、…
HEATH&TIA