「好きです!」
古き歴史を誇るフランネル城の長い回廊に、少女らしい高い澄んだ声が響き渡る。
偶然その場に居合わせた者たちは、一瞬怪訝な表情を浮かべ――それが、何者かに向けて想いのたけを告げるものだと気付き、一斉に音源を確かめた。
そこには真っ赤な顔をして、逃がさないといわんばかりにヴァイゼン帝国の将軍に抱きついた少女がいる。
お相手の将軍は、少女を出迎えたときに浮かべたのだろう微笑のままで固まっている。ぴくりとも動かない。
大柄な男と小柄な少女のそんな組み合わせは、なんとも不思議な光景だった。
抱き合っていても、よくて仲のよい兄妹といった風情で、とても色恋沙汰めいたものにはみえない。というか、少女が一方的に抱きついているので、当たり前といえば当たり前だ。
だが、少女は確かに自分の恋心を伝えていた。
聞き間違いにしては、あまりにもくっきりはっきり、誰しもの耳に残ってしまっている。
しばしの沈黙の後。
ぱか、と歴戦の戦士たる将軍のヒースが、間の抜けた様子で口をあけた。
まあ、それも無理はない、と観客全員がそう思った。
年端もいかぬ少女に、こんな公衆の面前で告白されるなど、誰が思おうか。
大方、理解を超えたこの事態に、うまく流すこともできず、かといって肯定もできず、どうしたらいいのかわからなくなっているのだろう。
そして。
「……ふっ」
彼らの一番近くに立っている人物が噴出したのも、これもまた、仕方のないことだった。
「ふふっ、くっ……よ、よかったじゃないか、ヒ、ヒ、ヒース将軍……くくっ……」
ヴァイゼン帝国皇子、ヴァルドが口元に拳をあて、笑いを堪えている。こんな皇子など、これまで誰もみたことがない。
いつもの余裕を崩さぬ冷静なヒースからは想像もつかない今の姿が、ヴァルドの心のうちにある笑いの琴線に触れたのだろう。
ぎぎぎ、と助けを求めるように、笑うのを諌めるように、ヒースが首を回して己の仕える主を見遣った。
その瞬間、聞こえていないと思ったのか、伝わらなかったと思ったのか、すうとティアが息を吸い込んだ。
「待て、ティ――っ!?」
再攻撃の準備に気付いたヒースが、その大きな手のひらでティアの口元を覆うより早く、もう一度切羽詰った愛くるしい声が響く。
「ヒース将軍、大好きです!」
伸ばしかけた手を無様に宙に浮かせて再び動きを止めたヒースの額に、じっとり汗が滲んでいく。いい歳をした大人の男が何もできずにうろたえる様は、微笑ましさを通り越して若干哀れだった。
「……ふ、は、ははっ!」
とうとう堪えられなくなったらしいヴァルドが、顔を伏せて肩を震わせはじめる。つられたように、柱の影で小間使いが噴出した。次々とあがっていく笑い声に、ヒースの頬が引きつっていく。
この状況を、当事者のヒースがどうにかできるはずもない。もう一方の当事者であるティアも、どうにかするつもりは毛頭ないだろう。あったら、誰がみているかわからないこんな場所で、こんなことしでかさない。
回廊に、盛大に複数の笑い声が響くのも、時間の問題だった。
そんな衝撃の告白劇から、はや三ヶ月の時間が流れた。
その間、カレイラの英雄からヴァイゼン帝国将軍へと、一方通行な恋物語は日々面白おかしく展開されてきた。
もはや城内も街の住民も、そんな二人をみては「またやっている」と、くすくすと笑うだけだ。
なにしろ、ヒースあるところに、ティアあり。ティアゆくところにヒースあり。とまでいわれる始末。
あげく、いつティアがヒースの心を掴み取るのか、こっそり賭けまでされていたりする。それを知らぬは本人たちばかりなり。
そして、快晴の空を渡る風が心地よい本日。
フランネル城の一角で、ヒースとヴァルドは顔をあわせていた。
「ヒース将軍、急な話ですまないが、これを国境警備の師団長へ渡してきてくれないか」
分厚い書類がはいった封筒を、ヒースに差し出す。機密文書の類であるならば、こんな回廊で、すれ違ったついでに渡すべきではないが、これはそこまでのものではない。
「かしこまりました」
それを承知しているヒースが、頷きながら恭しく受け取る。
「ああ、それから、あのあたりの魔物の掃討も頼みたい」
以前ほどではないが、それでも魔物の脅威はある。帝国と王国の和平が成立し、人や物の行き来が盛んになった今、商人や旅人のため、安全な旅路の確保に配慮することも必要なことだった。とくに帝国領内でなにかあっては、問題だ。
「はっ、もとよりそのつもりです」
に、と僅かにヒースの口元に浮かぶ野性味を帯びた笑みは、「事務作業続きでそろそろ身体を動かしたいだろう」というヴァルドの予想を裏付けるもの。
「頼りにしているよ、ヒース」
ヴァルドは、己の心と背中を預けられる部下へと笑いかけた。
お任せくださいと、ヒースがそれに応える。その様は、とても頼もしい。
厳しい視線が、互いの信頼を感じ取ってふと緩む。上司と部下だけではなく、ともに平和を目指した仲間として、その雰囲気が和らいだ瞬間。
「ヒース将軍っ! 好きですっ!」
「ぅぐっ!」
ふかふかの絨毯をうまく利用し、足音を消し気配も消した突然の乱入者が、柱の影から飛び出して、ヒースの背へと飛び上がって張り付いた。
三ヶ月、まったく変わることのないその告白は、もはや挨拶となって久しい。
そして、いくつもの戦場を駆け抜けてきたヒースの背後をとったあげく、その逞しい首を後ろへ傾けさせた人物は、ヒースの右肩からひょっこりと顔を覗かせた。
その華奢な身体に、どうしてそれほどの力と勢いがあるのかわからないけれど、幸せそうに頬を染めた恋する少女には、それくらいできて当たり前なのかもしれない。
柔らかな髪が揺れ、大きな瞳がくるくると色を変える。
そんな自分の恩人である少女へと、ヴァルドはにこりと笑いかけた。
「今日も元気だね、ティア」
「こんにちは、ヴァルド皇子!」
にこっと向けられる笑顔と、溌剌とした挨拶が心地よい。
「それにしても、毎日毎日熱心だね。飽きたりしないのかい?」
ヴァルドの何気ない問い掛けに、ふるふるとティアは頭を振った。
「そんなこと絶対にありえません!」
「そうか。それは素晴らしいことだ」
ヴァルドが心からそう思って賞賛すると、はにかむように微笑んだティアが、ぎゅうと腕に力を込めたのがわかった。
「えへへ、ありがとうございます」
そんな素直な感謝の言葉が響く中、ぎりぎりと首を締め上げられる格好になっているヒースが、とんとんとティアの腕を叩く。しかし、その戒めは緩まない。
「……あの、オレを無視して話進めないでくれますか……」
さきほどまでの将軍らしさはすっかり失われ、どこかげっそりとしているヒースをよそに、その正面にいるヴァルドと、その背中にくっついたままのティアは、和やかに会話を交わす。
「一体、いつまでそうしているつもりなんだい?」
「ヒース将軍が、私を好きだっていってくれるまでです!」
そんなティアの言葉を受けて、ひとつ頷いたヴァルドはヒースと視線を合わせた。
「だ、そうだ。いやはや、男冥利につきるね、ヒース将軍?」
「お、皇子、他人事だと思って……」
自分でも意地の悪いような、楽しそうな笑顔になっているだろうと思いつつ、ヴァルドは小さく首を傾げた。
「おや、私は部下と恩人の幸せを祈っちゃいけないのかな?」
「……はぁ……」
もう何を言っても、ここに味方はいないと察したらしいヒースが、深海の底へと沈むようなため息をついた。そして、のろのろと手を上げる。
「きゃ! むぅ~……」
ヒースによって、無言のうちに腕をはがされたティアが、不満げな声を上げながら絨毯の上に足を降ろした。さすがに、ヒースに本気で力をこめられれば、いくらカレイラの英雄といえども敵わないらしい。
「ティア」
「はい、なんでしょうか?」
外套を華麗に捌き、ヴァルドはそんなティアへと一歩踏み出した。
「ヒースに飽きたら、いつでも私のところへおいで」
愛を囁くように、ティアの顔を覗きこんでそう告げる。
ぎょっとヒースの顔色が変わった。
「っ、皇子!?」
よくわかっていないのか、きょとんとしたティアの手をとり、ヴァルドは続ける。ヒースは当然無視である。
「私たちはヒースより年のころも近い。それに私は、君のことがとても好きだ」
告白されているというのに照れたそぶりもみせず、ティアは一瞬目を瞬かせた後、にこりと微笑んだ。誰しもの心を癒すような、可憐な花によく似た笑顔だった。
「ありがとうございます、皇子。でも、私が好きなのはヒース将軍だけなんです」
はっきりと、その想いをティアは言う。それは、ヴァルドが想定していたものだった。
「ふむ、前から一度尋ねようと思っていたのだけれど……。ティア、君はヒースのどこが好きなんだい?」
至極当然なその質問は、この恋物語を見守るものたち全員が持ち合わせているものだろう。
どんな素晴らしい答えが返ってくるのかと、ヴァルドは多大なる期待をこめてティアの動きをみつめる。
「よくわかりません!」
が、ティアは相変わらずの輝くような笑顔でそうのたまった。
ヴァルドは、思わず勝手に空気の漏れ出そうとする口元をおさえた。
こうくるとは思ってもみなかった。
「素敵なところたくさんあるから、考えてるとまとまらなくて。結局、やっぱり好きだなぁって幸せに思うから……つまりですね、よくわからなくなっちゃうくらいに、私、ヒース将軍が好きってことなんです!」
恥ずかしげもなく、そう声高らかに握りこぶしつきで言われてしまったヒースが、頭をかきむしらんばかりの勢いで目を白黒させている。
その対照的な姿は、実に面白い。
「なるほど。やはりヒースは幸せ者、ということか。では……、」
ふむ、とヴァルドが頷きながら、さらに問いを重ねようとしたところで。
「あーあーあーあー! ほら、いくぞ、ティア! 御前失礼いたします、皇子!」
とうとういたたまれなくなったらしいヒースが、強引に二人の会話に割ってはいる。片手でひょいとティアを持ち上げ、小柄な身体をそのまま荷物のように肩に担ぎ上げた。
「はぁい。じゃあ皇子、さようなら! またー!」
それにとても素直に返事をし、ヒースの肩に腹をあずけた格好のティアが、ぶんぶんと手を振ってくれる。
そして、二人は聞いている方からみれば、じゃれあっているとしか思えないような言葉を交わしつつ、嵐のように慌しく去ってく。
その姿が長い廊下の端に見えなくなった頃。ヴァルドはとうとう耐え切れずに声を震わせて笑い出した。
荘厳華麗な装飾が施された高い天井と、広大な敷地を渡る回廊へ、ヴァルドの声が響いていく。
ああ、はやくいってしまえばいいのに。
ふと、そんなことを思う。
自分の心を頑なに認めようとしないヒースが、羨ましいような、愚かしいような。
あの娘に思われるなんて、世界一の幸せ者のくせに、なんと贅沢者なのか。はやく捕まえないと、横からさらわれたって文句はいえないというのに。
だが、あの調子なら、ティアはヒース以外に目をくれることはないのだろう。
そしてまた逆に、ヒースがティア以外を欲しがることもきっとない。
ここ最近の二人を見ていればさすがにわかる。ヒースと、伊達に長い付き合いをしているわけでもない。
きっと、もうすぐだ。
賭けの受付は、まだしていただろうか?
そんなことを考えながら、なんとか笑いをおさめたヴァルドは、ゆっくりと赤い絨毯を踏みしめて歩き出した。
ヴァルド皇子の前を辞したあと、ついていくといってきかなかったティアと一緒に、ワーグリス砦方面へと歩きながら、ヒースは痛むこめかみを揉みほぐす。ここ最近癖になっている溜息が、勝手に零れた。
「まったく……、君はいったいどうしたというんだ。恥ずかしくないのか?」
ティアは、こんなにもあけすけな性格だったろうか。自分の記憶違いなのか、それとも元々そういう性格だったのを、自分が見抜けていなかっただけなのか。
共に投獄され落ち込むティアを励ましていた頃や、徒手流派の稽古をつけていたときの態度に、そんなところは微塵もなかったはずだ。
ヒースの葛藤など何処吹く風で、空を飛び去る小鳥の影を追っていたティアが、きょとんとした顔を向けてくる。
「え? 恥ずかしくないわけじゃないですけど……、でも、ちゃんといわないとヒース将軍には伝わらないじゃないですか」
ね? と首を傾げる年下の少女に、すっかり自分という人間を見抜かれている。
「……むむ……」
しかし、だからといってこの状況はない。どうしてこうなった?
あの事件以降、繰り返してきた自問の答えは見つからないと知りつつ、心の内で呟く。
その間に、軽やかに飛び跳ねるようにして、ティアがヒースの前に回り込む。そして、背中で手を組んだままヒースを見上げてくる。
通せんぼをするようなその行動に、思わずヒースが足を止めれば、ティアが微笑んだ。
渓谷を吹き抜ける風が、その髪をしなやかに舞わせる。それらが太陽の光に煌いて、ヒースは思わず目を細めた。
「ね、ヒース将軍。いつになったら……いってくれますか?」
その心のうちにある想いを、その声でちゃんと伝えて欲しい。
告げられはせずとも、そんな続きが聞こえたような気がして、ヒースは口を引き結ぶ。
すぐに言葉がでてこない。口元を手で覆い、ティアからほんの少し目を逸らす。
本当は、ヒースだって気付いている。
自分が、どうしようもなくティアに惹かれていることくらい。
最初は戸惑い、何を言っているのかと思っていた。きっと気の迷いだろうと、ティアが一番大変なときに側にいた自分への感情を読み間違えているのだろうと、そんな風に思ってさえいた。
だが、ティアは毎日毎日、飽きることなく自分への想いを口にし続けた。
本当、なぜこんな男がいいと彼女はいうのだろう。理解に苦しむ。
血を浴びるように戦い続けてきた自分には、ティアのような輝かしい存在は、太陽のように眩しくて、顔を背けたくなる。目が、焼かれてしまう。
だけれど、それが綺麗だとも、思ってしまった。
そんな存在が、己の傍らにいてくれるならば、どんなにか素晴らしいだろうと、いつの間にか考えるようになっていた。
ただ、そんなこちらの気持ちが、いわずともすでにティアにはわかっているようなところが、なんだか悔しく思う。
「……そうだな。世界が滅ぶときにでも、な」
複雑に絡み合う気持ちが、本心でない言葉をヒースに吐かせる。
ヒースにしてみれば、それはほんの少しの意趣返し。
だがしかし。
「やったぁ! わかりました、楽しみにしてますね!」
ティアは素直に喜び、満面の笑みで諸手を挙げて飛びあがった。
その様子に面食らった後、ばつが悪そうな表情を浮かべ、がしがしとヒースは乱暴に頭をかいた。
ヒースは心の中で、降参するように零す。
負けた。
いや、最初から、負けっぱなしか。
そして、こちらに背を向け、鼻歌混じりに踊るような足取りで歩き始めたティアに、手を伸ばす。
握りつぶせそうなほどの手首をとり、軽い体を無言のまま引き寄せる。
「ふぇ?」
何か言おうとするのを許さぬように、その小さな顎を持ち上げ、背後から覆いかぶさるようにして唇を寄せる。
胸から腹の底にかけてわだかまるこの想いを、言葉にできないかわりの、口付け。
んぅ、と小さく声を漏らしながらも、それを受け入れるティアに、暖かな気持ちが湧き上がり募っていく。
ああ、やはり自分は――この少女に恋をしている。
いまさらのように、そんなことを強く思う。
だって、そうでなければ、ただ重ねるだけの幼い口づけが、こんなにも心地よいはずがない。
底なし沼のようにはまり、沈んでしまいそうだ。
だが、このままではいけない、と脳裏に警鐘が鳴り響く。
もう一歩奥に踏み込んでしまう前に、ヒースは顔を離した。
強引な口付けを与えておいていまさらだが、年上がこれ以上先に節操をなくすわけにはいかなかった。
まあ、もうすでに手遅れかもしれないが。
そして、抱きしめていた少女を解放すると、ヒースは甲冑の金属音荒くワーグリス砦方面へと歩き出す。
が、後ろでぴくりとも動かぬ気配が気になり、数歩先で立ち止まって。少し悩んだ末に、ふりかえる。
そこには、ぽーっとした表情で、己の唇を細い指でなぞるティアがいる。
淡く色づくふっくらとした唇から、ほろり漏れる言葉。
「……私、はじめてでした……」
う、とヒースは息を呑む。
そうだろうな、とは思っていた。だが、我慢ができなかったというか、自制ができなかったというか、したくなったのは仕方がないではないか。それに、自分を好きだといったのはティアのほうで、行動でその想いに応えた以上、あれこれいわれる理由はない。自分を翻弄する行いを続けてきたティアも悪いと、情けない責任転嫁までしたくなる。
ぐるぐるとヒースが言い訳にもならぬことを考えている間に、ティアがぱあっと笑顔を花開かせていく。
「すごく、すごく嬉しいです……! 私、今日のこと絶対に忘れません!」
そう言って駆け出したティアが、地面を力強く蹴って飛びついてくる。
今度は首を絞められることのないように気をつけながら、ほんの少し身を屈め、ヒースはそれを受け止めた。
さらりと、少女の細い髪が、ヒースの頬をくすぐる。ふわりと鼻腔をくすぐる香りに、胸の鼓動が走るように音を重ねる。
ヒースは観念したように、ティアのほんの少し力を込めれば折れてしまいそうな腰に腕を回す。
滑らかな頬が摺り寄せられる。「好き」、と紡がれる言葉が甘すぎて、眩暈がする。
経験がないわけでもないというのに、ティアにからのものならば、幾度言われても慣れることなどないだろうと、わずかに残った冷静な思考が、そんなことを告げてくる。
そして、次に同じ言葉を言われたなら――自分はきっと応えずにはいられない。この想いを言わずにはいられない。
ああ、ちくしょう。これが、いわゆる惚れた弱みってやつか……
ヒースのごちゃまぜになっている心とは裏腹に、きゃらきゃらと楽しげなティアの声が、小鳥のさえずりのように、風に乗ってサルガッソ渓谷に木霊する。
ヒースはそんなティアを軽々と抱き上げ、ゆっくりと歩き出す。
細く続く道の先。世界を包み込むように、憎たらしいくらいに晴れ渡った青い空を仰いで、ヒースは諦め半分、幸せ半分の深い息をつく。
だがこれも、やがて幸せ一色になるのだろう。
そんな未来に思いを馳せて――ヒースは自分でもわからぬほどに、淡く、淡く微笑んだ。