UR&TIA

物事は順番に

 本日も世は平穏。 天気もよく、開け放たれた窓から吹き込む乾いた風が心地いい。 ふわり、絹糸のような栗色の髪を遊ばせながら、ティアは預言書をぱらぱらとめくっていく。 あらゆるものの設計図といっても過言ではないメタライズの項目と、にらめっこし…

精霊と果実

 そろそろ頃合、でしょうか。 ウルは顎に手を当てて、ティアの後姿をみつめながらそう思った。 今日も一日、預言書の価値を高めるために冒険にでかけ、夕暮れ間近に帰ってきたティアは、ひらひらとスカートの裾を遊ばせて家の中を歩いていく。「今日は新し…

その花の名を

「はい、ウル。これつけて」「はい?」 何気なく差し出されたものは、よく知っているものだった。 世界と契約を交わした際に与えられた、力を抑制し、預言書とのつながりの証でもあったもの。顔の半分を覆いつくし、ウルの「視る」という感覚を永遠に封じる…

秘密のくちづけ

 星の瞬きさえ聴こえるような静かな夜。 一人で住むには十分な、手入れの行き届いた小さな家。 身じろぎする度に、かすかにきしむ古い寝台。 そこに腰掛け、肩を抱かれたままティアはじっと恋人を見上げていた。 金の髪がわずかに揺れる。左右色の違う瞳…

コランダムの瞳

「すごーい……!」 素直に感嘆の声をあげるティアに、ナナイはくすくすと笑った。 香が焚かれ、どこか薄暗い、いかにもという雰囲気に仕立てられた魔女の館。その中央におかれたテーブルの上には、今は水晶玉ではなく色とりどりの宝石が置かれている。 女…

困った恋人

 ものすごい勢いでフランネル城からローアンの街を駆け抜けたティアは、己の家に飛び込むと扉を乱暴に閉めた。 ぜー、はー、と肩で息をしながら扉に寄りかかる。そうやって、脳へと懸命に酸素を送り込みながら考える。 ああもう。次に会ったらどんな顔をす…

英知と喜び

「アラシガサキ、かあ」 預言書のうち、花のページを開いているティアがぽつんと呟く。世界の片隅で咲く花々をこれまで数多くスキャンしてきた。預言書にあるその花のページの価値をあげるには、花言葉を知ることとその花がもつコードを外すことが必要だ。 …

むかしがたり?

 預言書の精霊は幾度も幾度も、世界の創造に立ち会ってきたという。 そうして生まれ成長し、やがて滅んだ世界たちの中には、この世界とはまったく違う姿になったものもあったという。ティアは、そんな過去の世界の話を聞くのが大好きだった。 なぜならそれ…

雪の夜

 冬の到来を告げるような嵐の従者は、秋から遣わされた天駆ける雷だった。「……すごい風」 寝巻きに着替え、さあそろそろ眠ろうかという宵の頃、窓から外を垣間見たティアは、ぽつりと呟いた。 ざわざわと木々の影が生き物のように蠢き、弓が放たれるよう…

無自覚の恋

 深い森の中、風で倒れたのかそれとも寿命だったのか、ごろりと大地に横たわる木に腰掛けて、ティアは預言書と向き合っていた。「ウル」「呼びましたか、ティア」 ふわり、と預言書から湧き上がった力が形を成していく。長い手足、雷を模した衣装と顔を覆う…

願いかなう日まで

「んー、さすがドロテア王女からもらった紅茶だよね」「ええ、よい香りです」 ふんわりと家の中に漂う芳しさにうっとりとするティアに、ウルは同意した。 せっせと預言書にためこんだメタライズの解読に頭を悩ませていたティアをみかねて、ウルが休憩を提案…