僕のヒーローアカデミア

愛などしらない

 みなさんは、愛を知らなければなりません―― 神の信奉者であるというその歳経た修道女は、皺だらけの顔に慈愛の笑みを浮かべ、歌うようにそんな言葉を紡いだ。 静まり返った教室、自分に割り当てられた出席番号17の席に座った少年――爆豪勝己は、若干…

心の在り処

 午後から行われていた、ヒーロー基礎学の授業が終わった。 一般教養と性質の異なるこの授業は、ヒーローに必要な咄嗟の判断力、無謀ではない作戦の立案、他者との連携、そして、不可能を可能にする困難に立ち向かう勇気――そういったものを養うことを目的…

かくて冒険の幕はあがる

 とある国のとある町。 豊かな自然に囲まれたその町は、大きな街道の交差点として、古より栄えてきた。 異国からきた冒険者。国と国を行き来する商隊。町の大通りには、彼らを相手に商売をする商人が店を構え、町は活気に満ち溢れている。 古い町並みにさ…

兄の威厳は地に落ちて

 両親が亡くなったのは、事故、だったそうである。 そうだ、などと、どこか他人事のように語ってしまうのは、そのときのことを覚えていないためだ。 薄情に聞こえるかもしれないが、人伝にしか当時の状況を理解することができないため、「そうだ」や、「ら…

空腹ヒーローとヒーロー飯

 きゅるり、ぐうぐう。「……」 とある町のとある路上。 ヒーロー名「デク」を名乗る青年――緑谷出久は、石化の個性を受けたかのように動きを止めた。 そして、いましがたみっともない音をたてた己の腹を、眉を八の字にした顔で見下ろす。 なだめるよう…